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サブカルチャー心理学研究会presents『腐女子の心理学』トークライブに行きました

 私が以前からtwitterでよく読んでいた書き手のひとりに、帯広畜産大学教授の渡邊芳之氏(@ynabe39)がおられます。どういう授業をやっているのか興味があり、勝手に放送大学の講義部分をニコニコ動画に上げたりしていたのですが、3年ほど前から更新が止まってしまい、寂しい思いをしていました(ラジ) すると、今回


 ↑こちらのイベントにゲストとして出演される、という話ではありませんか! 帯広まで行くとなると大変ですが、東京なら南東北からでも新幹線で2時間かかりません。せっかくの機会だ、という事で、見に行ってみる事としました。こちらのイベント自体も、腐女子の人についてはよくわかりませんが、オタクを数値的に表すとはどういう事か?というのは興味がありましたので、しっかり聞いてこよう、と思いました。

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阿佐ヶ谷駅
 そういうわけで、やってきました阿佐ヶ谷駅です。通過する事はあっても、降りるのは初めてです。

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ロフト阿佐ヶ谷
 こちらが会場の阿佐ヶ谷ロフト、南口のアーケード商店街をてくてく歩いていったところにありました。

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阿佐ヶ谷ロフトの豚丼
 入場券(コンビニで事前購入して、1,800円でした)の他、店内で500円以上の飲食物を頼む事、というルールだそうなので、メニューにあった「豚丼」を食べました。かなり甘みが強く脂ぎった味でしたが、これが本場の味なのでしょうか……?

 さて、トークイベント、最初は第一部「心理学で腐女子を語る」でした。まず「オタクとは何か」「腐女子とは何か」という事をきちんと定義しましょう、という事で、以下のアンケートを渡されました。

<オタク度尺度>

  • 漫画・アニメ・ゲームなどが好きである
  • 漫画・アニメ・ゲームのキャラクターが好きである
  • コスプレに興味がある。または好きである
  • 趣味に対してこだわりがある
  • 好きなキャラクターのためならば、いくらでもお金をかけてしまう事を厭わない
  • 自分の好きなものに対して詳しく調べる
  • 声優について詳しい
  • 漫画・アニメ・ゲームなどのキャラクターに情熱をかけている
  • 萌えという言葉をよく使う
  • 好きな作品やキャラクターに対する情熱は、なくならないと思う
  • 漫画・アニメ・ゲームの話が聞こえてくると自分も参加したくなる
  • 趣味に熱中していると嫌なことを忘れる
  • 友達同士で好きなものの話をしているのが楽しい
  • 好きなものに囲まれると幸福感がある
  • 自分の趣味の話で盛り上がりたい
  • 同じ趣味の仲間同士でいると安心感がある
  • 自分の趣味の世界に没頭していたい
  • 自分は他の人と価値観やモノの感じ方に違いがあると思う
  • 自分と同じものを持っている人や同じものが好きな人がいると仲間意識を感じる

1:全くあてはまらない 2:あまりあてはまらない 3:どちらともいえない 4:ある程度あてはまる 5:とても良くあてはまる
各項目に上の数値を入れ、その合計を出す。

 これが56点以上あればオタク、なければ非オタク(一般人)としていました。重度のオタクを判断するにはちょっと問題があるのでは(オタクに限らず、自己評価と他者からの評価はけっこう食い違う)と思いましたが、ある程度のオタクかどうかを見る分には悪くない評価では、と思います。また、

腐女子尺度>

  1. 男女の恋愛小説や漫画よりもボーイズラブの恋愛ものを読む
  2. ボーイズラブじゃない漫画や小説でもシチュエーションや台詞によってカップリングに変換してしまう
  3. 気がつくと好きなキャラクターでボーイズラブな妄想をしてしまう

 (1)が3点以上あり、(1)(2)(3)の合計が8点以上あれば腐女子、としていました。(1)(2)(3)の合計が8点以上あって(1)が1点か2点という人がいるのか?という気もしましたが(笑)、まあそういう基準でした。で、

 というグループ分けで、「耽美」はほとんどいないので今回データとしては省き、腐女子群・オタク群・一般群、という区分けでいろいろなデータをまとめる、という流れで説明がありました。

 まずは基本属性として「排他的人間関係」「同人誌志向性」「現実同性愛許容度」「作品内同性愛許容度」「美少年キャラ選好度」「変態性認識度」のグラフが示されました。いずれも腐女子群が高く一般群は低い、オタク群はその中間くらい、な傾向がありました。まあこれはイメージ的にそんなもん、といったところですが、「腐女子・オタクはコミュ障か」「~はブサイクか」「~は『恋愛をしたくない』のか」「腐女子・女性オタク・男性オタクでジェンダー意識は違うのか」これらのデータの結果が面白いところとなっていました。結果としては

  • 特に腐女子・オタクだからコミュ障、というほどの差はない
  • 特に腐女子・オタクだからブサイク、というほどの差もない
  • 腐女子・オタクも恋愛はしたいが、恋愛のために趣味を捨てるか、というと抵抗が出る
  • ジェンダー意識にはわずかに違いがあるものの、『はっきり違う』と言えるようなものではない

 という事でした。社会学者・北田暁大氏は「社会にとって趣味とは何か」という本で

『BLはフェミニズムである』という議論はどこまでも正しいように思われる。

オタクの下位類型に「男オタク」と「女オタク」がいるわけではない。腐女子=二次創作好きなオタクは極めて洗練された形で、それぞれの方法で男性中心主義的な世界観に ー意識の存否に関わらずー 異議を申し立てている。

 と述べているそうですが、そんな事ないよ、一般人と大筋変わんないよ、というのが山岡氏の発表でした。これはちょっと難しい問題ですね。「BLはフェミニズムか?」に対し、「BL(を楽しむ大多数の人)(現在)フェミニズム(的考えを持っているの)ではない」と「BL(を主導する一部の人)フェミニズム(的考えを強く持っているの)である」は両立します。今回のイベントで聞いた話+ネットで軽く調べた情報からすると、山岡氏の話の方が説得力はありますが、完全に北田氏の主張を潰せるかというとそこまででもないかなあ、と。

 最後に、なぜ腐女子(+腐男子)ができるのか、について、「学校読書調査」というデータより

  • 男子:小学生はコロコロコミック、中高生は少年ジャンプ
  • 女子:小学生は少女漫画、中高生は漫画を読まなくなる層(ファッション誌やアイドル誌)と少年ジャンプ層に分離

 から、少女漫画で恋愛漫画の下地ができた女性が少年ジャンプ層に流れると、恋愛と少年漫画とを組み合わせた「腐女子」が一定量できてくる、という推測をしておりました。こちらは前の項目に比べると少し説明が弱いのでは、と感じました。腐女子にならなかった女性オタクはなぜならなかったのか(少女漫画を読んでなかったのか?)、少女漫画をよく読んでいれば男性も数多く腐男子になるのか、これはイベントの最後で質問させてもらいましたが、そうなりそうだ(姉妹がいて少女漫画に触れる機会の多かった男性が腐男子になっている例はある)が、いかんせんデータが少ない、という話ではありました。



 続いて第二部、こちらから渡邊芳之氏が出演されました。放送大学での講義では妙に顔色が白かった心象があり、今回の方がふつうなのでは、というように見えました。ご病気で大変だ、という話なので、こういうふうに言ったら失礼かな…… お二人の雑談的な感じでトークが進められ、

  • サブカルチャーとは何か、ジャズ・ロックンロールなどからの始まり
  • 社会学と心理学の論の進め方の違い(社会学はテーマありき、心理学はノンポリ
  • 心理学は定義をしっかり定め、そこから特性・機能を調べる。社会学ではこれらを重要視しない
  • 属性を定義する尺度の妥当性について
  • 海外でも、BLに相当するサブカルチャーはあるか(小説ではある)

 これらについて語られました。こちらは30分くらいで終わってしまい、渡邊芳之氏の話をもっと聞きたかった私にとってはちと残念…… まあしょうがないですね。



 第三部では山岡氏がAUTO-MODの曲を3曲歌われました。こちらは私にはよくわからなかったのでコメントは控えます(笑)


 私がサブカル・オタク関係のイベントを見に行くというのは、2014年のこちら以来となりますが、楽しめて良かったです。また、東京にはちまちま行けるといいな、と思います。